香港便り 1997年6月1日
- 香港返還一ヶ月前 -
(前書き削除)
5年半前に杭州に旅行されたとのこと奇遇ですね。
上海ヘの移動に利用された快速列車は我々が上海から乗った列車と同じものかも知れません。前のメールでは“電車”と書きましたがこれはかなり怪しく、ディーゼルカーではなかったかと思います。2階だての車両で、我々の指定席は下の階でした。向かい合った座席の間にテーブルが出っぱっていて、その上に古びた金属製のプレートがごみ箱代わりに乗せてあったのがいかにも中国的だなとの印象を受けました。掃除のおばさんが時々まわって来て中のゴミを回収してくれます。ほぼ満席でしたが、一等車だったので立っている乗客はなく、エアコンも働いていて広々とした車内は快適でした。
切符代は確か一人数百円だったと思います。車内販売の価格もリーズナブルで、今手元にある車内で買った杭州の地図には定価2.5元とあります。日本円で40円弱です。上等とは言えませんが裏には写真が載っていたり観光案内なども書かれていたりで香港だったらまず200円はとるでしょう。 途中、日章旗が掲揚され、日本企業との合弁・合作工場と思われるビルを幾つか見かけました。日本人のビジネスマンも何人か働いているのでしょう。
ホテルは、我々もシャングリラに泊まりました。
ロビーの正面には水墨画風の大きな絵が掛かっており、その前に大きなソファーとテーブル、右側がすぐエレベータ、反対の左手の方は、売店とカフェテリアになっていて、その向い側が滝のある室内庭園になっており池には鯉がいました。奥は別館への長いチューブ状の通路につながっていましたが、チューブの上部の所々に扇風機が回っていたのが奇妙でした。受け付けに日本人の女性がいてホテルに入ってすぐ日本語で声をかけられたのにはびっくりしました。
5年半前とはだいぶ変わってしまっているかも知れません。
さて香港は返還まであと一ヶ月です。
7月1日より中華人民共和国香港特別行政区となります。昨夜のテレビで、北京の天安門広場でのカウントダウンの表示があと31日を告げているのが映っていましたが、地元である香港ではさっぱり盛り上がりが無く、まるで人ごとの様です。職場でも話題なる事はあまりなく、マスコミもこれこそ人ごとであるはずの尖閣諸島の方により力を入れているようです。
7月1日を境に生活が変わる様な事は無く、変わるとしてもその後何年かかけて少しずつ変わっていくのでしょうし、かつ変わる場合は、今より良くなるという期待はもてず、悪い方向にしか行かないと思っているのでしょう。現状維持してくれる事を願っているが、それも中国政府の考え一つでどうなるかは本当の所わからないし、政情不安になり北京に嵐が吹けば香港など飛んでしまう。自分達の将来を自分達できめる当事者能力は無いわけで、できることと言えば、香港での居心地が悪くなった場合、シンガポールかカナダかに逃げる事で、その準備と覚悟はとうにできている。と言った様なのが中流クラスの人達の心境なのでしょう。
最近の当地での話題は、コレラ、ドイツはしか、O-157、6月4日の天安門記念集会、復活した釣魚島(尖閣諸島)騒ぎ、それにTamagotchiです。 Tamagotchiとは日本渡来の例のタマゴッチのことで若者達の間で大変な人気です。
法外な闇値がついたり、偽物、インチキのたぐいは当地としては当たり前、ご臨終を迎えたTamagotchiを葬るためのホームページ(バーチュアル墓地)がインターネット上に開設され既に数千ものTamagotchiが手厚く埋葬(?)されているだとか、育て方につての24時間ホットラインが開設されるとかで常軌を逸していますが、子供たちが生命を粗末にするようになるとのまともそうな意見も出ています。
ご質問の英語と広東語の運命については、両語とも公用語として残ると言われていますが、北京語が公用語に加わり相対的な地位は低下するでしょう。公文書が中国本土式の略字に書き換えられるかは不明ですが今のところそんな動きはありません。少し前の新聞記事によると現在約400ある中学校のうち219校が授業を英語で行っており、この大半が政庁の指導により中国語による授業に切り替えることを求められているとの事で、世論の反発を招いているようです。
返還による若年層の英語力の低下を心配する声をよく聴きますが、香港人は元来おしゃべりで言葉の才能がありそうなので、実際には英語、北京語、広東語のトリリンガル化が進むのでしょう。どうなるのか楽しみです。
ところで、三田さんの17歳ですが残念ながら大丸の旭屋には置いていませんでした。香港最大の日本書店で日本の大百貨店にある本屋さん並みの規模があるのですが、元々文芸物の書棚が少なく純文学風私小説など売れるはずありません。そごうの旭屋もしかりでした。返還物につては何十種もの本が積まれていて、おそらく世界でもっと充実しているでしょう。取り寄せる事も勿論できますが、そこまでの意欲も無く次の帰国の機会にでも買おうかと思っています。
(以下削除)