香港便り 1997年5月27日
- 抗州について -
(前書き削除)
私の方は相変わらず出歩いてばかりで、先週は中国の抗州にいました。
ソフトバンクの孫正義がお金を出し、アメリカの通信関連ハイテクに従事している中国人技術者を集めて作ったUT-Starcomというベンチャー会社を訪問するのが主な目的でしたが、途中丸一日の停電があり仕事にならず、その日は市内観光のチャンスに恵まれるなど半分遊びに行ったような出張でした。反面、ジックリと街中を散歩したり地元の中国人から生活面の話しを聴けたりで私個人にとっては有益な旅行でした。
杭州につてはクイシュウという俗称(日本の業界用語?)だけは知っていましたが、どんな所か全くノーアイデアで上海の近くにある事すら知りませんでした。早朝7時というのに既に人ごみでごった返している上海駅から電車に乗り、地平線の先まで延々と続くのどかな田園風景を見ながら3時間ほどかかりました。車中、台湾からの観光客と思しきおじさん、おばさん方の団体さんのはしゃぎ声が煩かったのが玉に傷でしたが、これも近ごろの日本ではほとんど見掛けなくなった光景で懐かしい面もあり、また、車掌みたいな帽子をかぶった軍服スタイルの美人がタイミング良くお茶やらインスタントラーメン、地図などを売りに来たりで車内サービスもまずまずでした。
杭州は上海から南西に170kmほどの所、杭州湾の奥まった所に在ります。かつて1100年代に満州族の南下により宋が揚子江付近まで追いやられた時都をここに移し、その後150年ほど南宋の首都として栄えたことのある古い歴史都市だそうです。かのマルコポーロさんもこの地を訪れたことがありこの世で最も美しい街だと絶賛したとかで、確かに西湖の辺りは中国式の建物が自然の中に調和し、滑らかな湖面には中国式の小船大船が浮かび趣深いものがあります。今でも古い面影があちこちに残っていて落ち着いた風格があるのですが、中国有数の観光地だそうで街中団体さん、アベックさん達でいっぱいなのが興ざめです。
さて、今の杭州は中心部には近代的高層ビルが立ち並び、街行く人々は身なりも小奇麗で幸せそうです。電話の普及率38%、携帯電話の普及率10%と中国としては、いやアジア全体で見ても破格の発展ぶりです。北京や大連、石家荘などの首都圏地域とは大違いです。
中国は本音の所では既に物欲に目が眩んでしまっているのでしょうが、建前上はやはり人民のための崇高な思想の方を優先させる必要があり、全国の模範となるべき首都圏でそう露骨に外資を入れたりしてお金儲けに走るわけにはいかないのでしょう。中国では地域の経済発展は北京からの距離に比例し、海岸河岸からの距離に半比例するという法則が成り立ちそうです。
それにしても電話の普及率38%には驚きです。杭州の人口は100万を少し超えた程度ですが、この程度の規模の都市は中国に幾つもありそうです。杭州が中国人にとって屈指の観光地であることを差し引く必要がありますが、中国中の中小都市が杭州なみに発展するとするとこれは大変な事になります。仮に中国全体が杭州なみのレベルになるとすると、現状の中国の電話普及率は1-2%ですからあと30ポイント以上増えるわけで、人口12億として今後の増加は4億回線、1回線当たりの費用をUS$500とすると20兆円という計算になります。話を10分の1に割り引いても2兆円です。
大変なマーケットで、世界中の通信機メーカやATT等のオ ペレータが血眼になって中国に押しかけるのにもうなずけます。インドなどと違って文化的な基盤がしっかりしており教育レベルも少なくとも都市部についてはかなり高いものと思われます。潜在的な可能性と現状で実現されているレベルとの高低格差があまりに大きくかつその人口や地理的な面での広がりが巨大であることの掛け算効果はたまらなく魅力的なのでしょう。
さて、三田さんの話ありがとうございました。私の場合彼と教室を共にしたことはなく記憶もかなり曖昧でデビュウ当時顔写真を見てこんなやついたのかなと思ったほどです。三田コピスタ-の御曹司が何組だかにいるとかの話を仲井あたりから聞いたような気がします。今から思えば残念のような気がしますが、抵抗もありませんのでこの週末に大丸の旭屋で探してみようと思っています。
(以下削除)