2年半ほど前に作成したレポート「不思議な日本経済」の続編です。最近ある先生から先のレポートに対するコメントをいただきました。以下はその返事として作成したものです。
最近の政府の動きを見ていると、現内閣には国の借金を返そうという意思がさらさら無いのではないかと思えてきます。
今のところ、巨額借金からくる問題は出ていないし、人々は平和に暮らしている、今後も当分の間は深刻な問題にはならないだろう、国債をドンドン発行しても日本の銀行が買ってくれるし日銀も買ってくれる、危険なレベルまでは未だ余裕がある、危険レベル以下をキープさえしておけば借金は永遠に続けることができる、… というような事を本音のところでは考えているのではないかと疑いたくなるのです。
1980年代のバブル経済を思い出します。あの当時、株価や不動産価格が上昇を続け、誰もが「これはおかしい」と思いつつ、まだ上がるだろう、出遅れたにしろ今買っとけば儲かる、土地の値段は絶対に下がらない、と考えマーケットがドンドン膨張を続けたのです。当然の結果として、株価や地価が永遠に上がり続けるはずもなく、ある時点で下降に転じどん底に落ちたのです。
今の国の借金についても同じような兆候を感じています。まだ大丈夫と思っている内に危険レベルを超えてしまい、国がコントロールできない状態に陥りそうな気がします。国債の金利が2%になっただけで政府は毎年20兆円もの利息の支払にせまられることになるのです。それだけで財政が破綻してしまい日本中が大混乱になるでしょう。
現政権は危険な賭けをしているのではないでしょうか。最優先事項は「安保法案」を成立させることで、そのためにはたとえ見せかけであっても景気を良くしておく必要があり、法案が通ってしまえば「強い日本」、「美しい日本」を実現するための準備が整ってあとは何とかなる、というような極めて危険な考えを持っているような気がしてならないのです。
デフレがなかなか改善されない理由として、日本の産業構造に根本的な問題があるせいではないかと最近思いはじめています。家電にしろ、車や食品にしても、日本にはメーカーが多すぎるのではないでしょうか。以前は日本のメーカーに十分な国際競争力があったので、輸出によって多くのメーカーが共存できたのでしょうが、今では途上国が力をつけてきたせいもあって輸出が思うように伸びず、生産力が国内マーケットに向かい、そのことが物価の押し下げ要因になっているように思えます。他の先進国を見渡しても大きな家電メーカーが5つも6つもあるような国があるでしょうか。車のメーカーについてもしかりです。各メーカーとも国内競争が厳しくなり製品の性能を上げた割には販売価格を上げられず、当然従業員の給与も低いままに留まります。
雇用の安定は確かに大切です。日本全体を包む漠然とした不安の中、人々は節約志向に走らざるを得ないのでしょう。政府の経済対策の発動にもかかわらず、相変わらず需要は伸び悩んでいるようです。
やはり、問題はより根本的で構造的であるような気がしています。
最近少しは新卒者の就職率が改善されつつあるようですね。より深刻なのは非正規雇用の問題でしょう。
私がサラリーマンを辞める直前にいた会社では派遣の人が全社員の3分の1を占めていました。1500人中500人です。正社員の雇用に当たっては非常に慎重でした。
派遣社員の人件費は正社員の約半分で、不要になれば何時でもカットでき、言い方は悪いのですが、非常に使い勝手が良く安上がりなのです。しかも良く働きます。正社員の場合、ミスをしようが病気になろうがそう簡単にはクビにできません。労働組合の問題もあります。
20年ぐらい前は、派遣の人は特殊な分野に限られていたように記憶していますが、規制がだんだん緩くなり、結果的に企業の派遣社員への依存度がここまで上がってしまったのです。
本来、派遣社員の人件費はもっと高くてしかるべきではないでしょうか。便利で使い勝手が良いけどコストは高い、というのがあるべき姿だと思います。派遣社員の方々の収入は正社員のそれより高くてしかるべきだと思うのです。
なぜこんな風になってしまったのでしょうか。やはり需要と供給の関係からくるのでしょう。大企業(中企業も?)が正社員の採用を極力絞ろうとするので、あぶれた高卒、大卒の多くの若者たちはやむなく派遣会社に登録という道を選ばざるをえなかったのでしょう。そのうち正社員への道も開けるかもしれないという安易な期待もあったのかもしれません。
企業の論理としては正社員を絞って派遣社員を増やそうとするのは当然のことです。前に勤務した会社でもそうでしたが、企業では余剰人員を多くかかえています。世の中の動きが速く、技術の進歩も激しいなかでは、どうしても余剰人員が多数発生し、一方で人手不足にも向き合わなければならないといった矛盾した状況がいたるところで発生するのです。
私が経験した会社の大半では、振り返って思えば、「人が余っている」というのが全般的な印象です。外国と比べると日本は未だましなのかもしれませんが。
だんだん年寄りの愚痴になってきましたので、この辺でおしまいにします。何かのヒントにでもなればよろしいが。
P.S. 先ほど浦安図書館のホームページで資料検索をしましたら金子勝さんの最新の著作とおぼしき「資本主義の克服」がありました。他にも沢山でてきましたがアベノミクス関連ではこの本が読みやすそうです。あいにく貸し出し中でしたので予約しました。伊藤正直さんと浅井良夫さんについては難解そうなので敬遠です。